この本を読むきっかけとなったのは、NHKのドラマだった。
「金儲けのためにインチキ新興宗教を立ち上げた男二人の話」との番宣に、勝手にコメディドラマを想像していた。
初めの頃はその想像を裏切ることもなく、面白おかしく見ていて、原作を読んでみようと思い、図書館で借りたのだった。
ところが次第に深刻な話になって行く。
大物政治家、大手宗教団体の教祖、怪しい古美術商たちの悪事に巻き込まれ、聖泉真法会の大きなスポンサーだった森田社長が手を引いてから、大勢の信者が脱会し、結局、当初からの女性信者が残る。
彼女らはそれぞれの悩みを抱えてやって来ていたのだが、次第に彼女たちの信仰がエスカレートしてゆき、教祖・桐生慧海をも超えてしまう。
元々、似非教祖なので仕方ないが、桐生の作った偽宗教の核を彼女らが埋めてしまったのだ。
信仰は怖い。
自分の信じることが正義と思い込んでいるので、側から見ると、おかしいとか社会に反しているとか、そういう事に気づかない。
祈りながらトランス状態に入ってしまうと、自分たちや身近なひとを脅かす「悪」を排除する為に、暴力行為も犯してしまうのだ。
もちろんその行為も彼女らの中では正当化されていて、悪気は全くない。
桐生慧海自身も集団暴行を彼女たちから受け、拉致され、最初は逃げ出すことを考えていたけれど、そのうち、自分の起こしたインチキ宗教に彼女たちを巻き込んでしまったことを後悔し、彼女たちの業を引き受けることを決意する。
下巻はとにかく凄まじく、一気読みだった。
壮絶な物語だ。
信仰は怖い、のか?
人間の心の弱さが、怖いのかもしれない。
誰しも、そういう状態に陥らないとも限らないと考えると…。