下町(ダウン・タウン)/ 林芙美子



健康のために、ついに、運動を始めた。

天候に左右されると続けられない気がしたので、何年か前に購入して今は埃をかぶっている踏み台昇降の台をひっぱりだしてみた。
そしてBGMの代わりに、らじる★らじるでNHKラジオの「朗読」を聴くことにした。

主人公は、戦後、夫の帰りを待ちながら、まだ幼い息子を連れてお茶の行商をする『りよ』。
不安な毎日をやっとの思いで暮らしていたが、ある日、行商先で親切な男『鶴石』に出会い、ポッと小さな明かりが灯ったような気持ちになる。
息子もなつき、ふたりは次第に惹かれ合う。
だが、りよには夫がいる。
いつ帰るのかわからない夫がいる。
りよの心は揺れ動く。

そうこうしているうちに、鶴石が事故死してしまう。
突然の出来事に、呆然とするりよ。
不安な日々に逆戻りではあったが、そうも言ってはいられない。
また、行商に出る。
「静岡のお茶はいりませんか?」


戦後の混乱の中、女性が幼い子を連れて生きていくことは相当大変だっただろう。
その中での鶴石との出会いは、どれだけ心休まる出来事だったかと思うと、彼のあっけない死は、りよの心の支えをポキッと折ってしまうのではないかとハラハラした。
しかし、ぬくぬくした時代を生きる私の心配は無用だった。
儚そうなりよの中に、母の、そして、その時代の女性たちのたくましさを感じた。



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