ある男/平野啓一郎


 

自分の夫が、まったく別人になりすましていたのだとしたら…。
そのことを夫・大祐が亡くなってから知った妻・里枝は弁護士の城戸に夫が本当は誰なのか調査を依頼する。
なんと、大祐は戸籍を交換して他人の人生を生きていたのだ。

この調査を引き受けた城戸は在日3世で、心の奥底で自身の出自を気にしていたことに、「原誠(大祐の本名)」の人生を追っていくうちに、気がつき苦しむ。

他人として生きたいと思うのって、普通では考えられない。
だが、殺人を犯してしまった実父を持つ誠は、同じDNAを受け継ぐ恐怖を感じ、自殺未遂もし、結局あかの他人の戸籍でひっそりと生きる。
そこで出逢った里枝との束の間の幸せ。

朝鮮人だが日本人として生きる城戸は、誠の人生に自分の人生を重ね、最後は、気持ちの整理がつき心穏やかになって行く。


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平野啓一郎氏の小説は初読みだと、ついさっきまで思っていた。

しかし、このあと読んだ若林正恭(オードリー)氏の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の中で「分人」という言葉が出てきて、はて?となった。

奥付けのところに、平野啓一郎氏の著書『私とは何か「個人」から「分人」へ』からの引用とある。

私はこの本は読んでいないが、「分人」は知っている!
「分人」えーっと、確か、『空白を満たしなさい』に出てきたよね、って思い出し、調べたら平野氏だった!

いやだ〜、初読みじゃないじゃん。
著者名が全く頭に入っていなかった〜。

そうわかってみれば、『ある男』も、『空白を満たしなさい』もとても着想が面白いし、人間の内面をするどく描いていて、話はちがうけれど、大きな枠が似ているというかんじ?
それに、最初はぐいぐい興味深く読ませるけれど、途中から哲学的な感じも入って来て、少々硬いというか、理屈っぽいというか、そんなところも似ている。
すこし失速感があるんだよなあ。
最後までぐいぐい読ませてくれたら、最高なんだけど。






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